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IKTT / Stripe Lac
絣の緯糸は、本来ひとつの模様を織り上げるために、柄ごとに丁寧に竹の棒へ巻かれ、決められた順番に従って織り進めることで初めて図案として姿を現します。しかし、束の中のほんの一本でも糸が尽きてしまうと、その模様は二度と織ることができず、残された糸は使い道を失ってしまいます。 この布は、そんな“余り糸”に新しい命を与えるために生まれました。残った絣糸を二本撚り合わせ、一本の糸として再生し、もう一度機にかける。長い経験と勘が積み重なった織り手たちが、その小さな“余り”から想像を超える豊かな表情を紡ぎ出したのです。Lac(ラック染め)の赤を基調とした余り糸を使い、ストライプ模様を再構築した今回の布もそのひとつ。黒の緯糸を差し色として使うことをあえて避けたことで、マーブルのような柔らかな揺らぎが生まれ、複数の糸が重なり合う自然なグラデーションが、布全体に深い陰影と静かな奥行きを与えています。 さらに布の両端には、織物本来の命をそのまま伝えるように経糸のフリンジを残し、重厚感を添えています。 今回のカンボジア出張は、この布に触れ、その背景にある“時間”をより深く知る旅でもありました。訪れるのは今回で二度目。カンボジアは発展途上国であり、昨年見た景色とは少しずつ変わりつつあります。都心部では開発が進み、道路は整備され、新しい建物も増えていました。 しかし、変わらない場所もあります。 IKTTの「伝統の森」に足を踏み入れた瞬間、去年とまったく同じ空気が流れていました。手織り機の“カタン…カタン…”という規則正しい音、糸車を回す優しいリズム、子どもたちの笑い声、遠くで聞こえる水牛や鶏の鳴き声。森の暮らしは少しも急がず、穏やかに、確かな呼吸を続けていました。 この森では、暮らしの中心に「織物」があります。草木を育て、糸を紡ぎ、染め、時間をかけて布を織る。言葉にすれば単純ですが、気の遠くなるような時間と多くの人の手を経て、ようやく一枚の布が生まれます。スマホひとつで何でも済ませられる便利な時代にあって、こうして手の温もりを守り、その土地の伝統を次の世代に繋ごうとする姿には、静かで確かな誇りを感じました。 ただ、私たちはこの布を「民藝品」としてではなく、あくまで“ファッション”として届けたいと思っています。「村の人のために」という立派な理由ではなく、ただ、この布の美しさに心を奪われた一人のファンとして。伝統、技術、手間のすべてが詰まった布が、日常の装いとして自然に溶け込み、誰かの生活を少し豊かにする。その未来を想像しながら、今回の布をご紹介しています。 今までにない重厚感と質感、そして人の手が生む温度を、ぜひ実際に触れて感じてみてください。 【Material】SILK 100% 【Color】Lac 【Size】1.80m×0.96m 【Price】¥90,000 + tax
IKTT / Stripe Lac
絣の緯糸は、本来ひとつの模様を織り上げるために、柄ごとに丁寧に竹の棒へ巻かれ、決められた順番に従って織り進めることで初めて図案として姿を現します。しかし、束の中のほんの一本でも糸が尽きてしまうと、その模様は二度と織ることができず、残された糸は使い道を失ってしまいます。 この布は、そんな“余り糸”に新しい命を与えるために生まれました。残った絣糸を二本撚り合わせ、一本の糸として再生し、もう一度機にかける。長い経験と勘が積み重なった織り手たちが、その小さな“余り”から想像を超える豊かな表情を紡ぎ出したのです。Lac(ラック染め)の赤を基調とした余り糸を使い、ストライプ模様を再構築した今回の布もそのひとつ。黒の緯糸を差し色として使うことをあえて避けたことで、マーブルのような柔らかな揺らぎが生まれ、複数の糸が重なり合う自然なグラデーションが、布全体に深い陰影と静かな奥行きを与えています。 さらに布の両端には、織物本来の命をそのまま伝えるように経糸のフリンジを残し、重厚感を添えています。 今回のカンボジア出張は、この布に触れ、その背景にある“時間”をより深く知る旅でもありました。訪れるのは今回で二度目。カンボジアは発展途上国であり、昨年見た景色とは少しずつ変わりつつあります。都心部では開発が進み、道路は整備され、新しい建物も増えていました。 しかし、変わらない場所もあります。 IKTTの「伝統の森」に足を踏み入れた瞬間、去年とまったく同じ空気が流れていました。手織り機の“カタン…カタン…”という規則正しい音、糸車を回す優しいリズム、子どもたちの笑い声、遠くで聞こえる水牛や鶏の鳴き声。森の暮らしは少しも急がず、穏やかに、確かな呼吸を続けていました。 この森では、暮らしの中心に「織物」があります。草木を育て、糸を紡ぎ、染め、時間をかけて布を織る。言葉にすれば単純ですが、気の遠くなるような時間と多くの人の手を経て、ようやく一枚の布が生まれます。スマホひとつで何でも済ませられる便利な時代にあって、こうして手の温もりを守り、その土地の伝統を次の世代に繋ごうとする姿には、静かで確かな誇りを感じました。 ただ、私たちはこの布を「民藝品」としてではなく、あくまで“ファッション”として届けたいと思っています。「村の人のために」という立派な理由ではなく、ただ、この布の美しさに心を奪われた一人のファンとして。伝統、技術、手間のすべてが詰まった布が、日常の装いとして自然に溶け込み、誰かの生活を少し豊かにする。その未来を想像しながら、今回の布をご紹介しています。 今までにない重厚感と質感、そして人の手が生む温度を、ぜひ実際に触れて感じてみてください。 【Material】SILK 100% 【Color】Lac 【Size】1.80m×0.96m 【Price】¥90,000 + tax
IKTT/Silk Scarf Tie
「カンボジアの蚕は黄色い糸を吐く」 僕が最初にこの布と出会ったのは、一人の顧客様がきっかけでした。 顧客様のしているストールが目に付き、鈍い光沢感のあるその生地はハリもあり、すぐにどこのものか確認したところIKTT(クメール伝統織物研究所)のものと教えてもらいました。 IKTTの創設者はユネスコから依頼を受け、カンボジアの手織り物を調査し、その伝統的な布に魅了された一人の日本人から始まったプロジェクトです。 森を開き、町を作り、伝統を守る。現在では数多くの人が関わり、その中の一人がそのお客様で、日本でのセールスアウトなどのお手伝いをしているとのこと。 現在大量に生産されているシルクは品種改良され、加工がしやすいように真っ白な生糸を吐き出しますが、カンボジアのシルクは真っ白ではなくシルクの原種に近い黄みがかった生糸を吐き出します。 その原種に近い生糸は丈夫でしなやか、力強い光沢です。 手に取っていただくとわかると思いますが、手紡ぎならではの節、手織りだからこその繊細さ。 色味はもちろん、絣の種類も豊富にあり、できるだけ全部を比べて見てほしいです。 機械生産に向かないカンボジアのシルクだからこそ、現地の女性たちが手作業で丁寧に作り出すこの布は後世に残さなくてはならないものだと思います。 その布を皆さんに知っていただくために、ストールという形はもちろんなのですが、今回クメール伝統織物研究所からの新しい提案、シルクバンダナとシルクリボンタイです。 そこまで大きくない為、日本の手ぬぐいのような感覚で巻いていただき、汗をかいたらこれで拭ってしまうような。 シルク100%ではありますが、力強い糸ですので、あまりかしこまらずガンガン使っていただけたらと思います。 お手入れに関しては、シルクは髪の成分と一緒ですので、お風呂に入った時に一緒にお持ちいただき、お持ちのシャンプーで揉み洗いしていただければ問題ありません。 森本喜久男氏が作ったIKTT(クメール伝統織物研究所) そこではカンボジアの女性たちが毎日養蚕から染色、糸を紡ぎ、手織りを行っております。 森本喜久男氏は織物を再生するだけではなく、織り手を育て、さらには織り手である村びとたちが暮らす自然環境までを再生しなければ、伝統織物を再生したことにはならないと、生活環境までをデザインした日本人です。 8/25〜販売開始 シルクバンダナ サイズ(個体差あり) 長さ84cm...
IKTT/Silk Scarf Tie
「カンボジアの蚕は黄色い糸を吐く」 僕が最初にこの布と出会ったのは、一人の顧客様がきっかけでした。 顧客様のしているストールが目に付き、鈍い光沢感のあるその生地はハリもあり、すぐにどこのものか確認したところIKTT(クメール伝統織物研究所)のものと教えてもらいました。 IKTTの創設者はユネスコから依頼を受け、カンボジアの手織り物を調査し、その伝統的な布に魅了された一人の日本人から始まったプロジェクトです。 森を開き、町を作り、伝統を守る。現在では数多くの人が関わり、その中の一人がそのお客様で、日本でのセールスアウトなどのお手伝いをしているとのこと。 現在大量に生産されているシルクは品種改良され、加工がしやすいように真っ白な生糸を吐き出しますが、カンボジアのシルクは真っ白ではなくシルクの原種に近い黄みがかった生糸を吐き出します。 その原種に近い生糸は丈夫でしなやか、力強い光沢です。 手に取っていただくとわかると思いますが、手紡ぎならではの節、手織りだからこその繊細さ。 色味はもちろん、絣の種類も豊富にあり、できるだけ全部を比べて見てほしいです。 機械生産に向かないカンボジアのシルクだからこそ、現地の女性たちが手作業で丁寧に作り出すこの布は後世に残さなくてはならないものだと思います。 その布を皆さんに知っていただくために、ストールという形はもちろんなのですが、今回クメール伝統織物研究所からの新しい提案、シルクバンダナとシルクリボンタイです。 そこまで大きくない為、日本の手ぬぐいのような感覚で巻いていただき、汗をかいたらこれで拭ってしまうような。 シルク100%ではありますが、力強い糸ですので、あまりかしこまらずガンガン使っていただけたらと思います。 お手入れに関しては、シルクは髪の成分と一緒ですので、お風呂に入った時に一緒にお持ちいただき、お持ちのシャンプーで揉み洗いしていただければ問題ありません。 森本喜久男氏が作ったIKTT(クメール伝統織物研究所) そこではカンボジアの女性たちが毎日養蚕から染色、糸を紡ぎ、手織りを行っております。 森本喜久男氏は織物を再生するだけではなく、織り手を育て、さらには織り手である村びとたちが暮らす自然環境までを再生しなければ、伝統織物を再生したことにはならないと、生活環境までをデザインした日本人です。 8/25〜販売開始 シルクバンダナ サイズ(個体差あり) 長さ84cm...